「黒路よしひろの現代短歌入門」第1編(001-010) |
翻訳:宿谷睦夫、添削:ブルース・ワイマン、 監修:ボイェ・ラファイエット・デイ・メンテ |
"Japanese Modern Tanka for beginners in the world composed by Yoshihiro Kuromichi" translator: Mutsuo Shukuya auditor: Bruce Wyman supervisor: Boye Lafayette De Mente |
CHAPTER(1) Post(1) (001) Does the kite I flew when I was seven years old float up in the sky over the Gobi desert which I now see in my dream? (I understand this imagery clearly....and it has deep meaning. I have no problem with it.....!) comments by De Mente (002) What will I realize in my future, I wonder? There must be pathways that I have built up on shore but they have been washed away! (Their meanings (above two tanka) are now clear and meaningful..... no further editing is required...and good luck with your introduction of Kuromichi San's poetry....) comments by De Mente Commentary(1) by Mutsuo Shukuya in “Introducing Tanka Poetry to the world” by Boye Lafayette De Mente Post(2) 003) I’d like to declare to everyone in the world a few secrets which I just keep in my own heart as diligent girls do so. 004) I used to dream of future happiness with you hearing your stories, but all of them lies you told long ago in our childhood. Commentary(2) by Mutsuo Shukuya in “Introducing Tanka Poetry to the world” by Boye Lafayette De Mente Post(3) 005) I tried praying to shooting stars instead of god for dreams to come true as many people have done, but only theirs would come true. 006) A white contrail, which extends straight, runs across the blue sky as if to break my heart as well as the girl who threw me over. Commentary(3) by Mutsuo Shukuya in “Introducing Tanka Poetry to the world” by Boye Lafayette De Mente Post(4) 007) The rooms on platforms resemble cages somewhat and people who wait for trains look like slaves interned inside their dark asylum. 008) I used to whistle merry tunes in my childhood although my mother prohibited this to me fearing that I'd call demons. Commentary(4) by Mutsuo Shukuya in “Introducing Tanka Poetry to the world” by Boye Lafayette De Mente Post(5) (009) I met a lady whom I've never met before she seems like an elf or a shooting star sparkling and inspires me up to now. (010) There was a lady who was cute and beautiful in my life before: I tried to propose to her in my past unrealized dream. |
第1編(001-010) 第1節(001-002) <1> 7歳の僕の手元を旅立った凧が飛んでるゴビ砂漠の夜 「この歌は前半が実際の幼少の時に糸が切れてどこかへ飛んで行ってしまった凧のことです。後半のゴビ砂漠は僕は実際には行ったことがなく、あれから数十年経った今でもあの凧は海を越えて遥かゴビ砂漠の空を飛んでいるのだろう…という空想の一首ですね。もちろんそんなことがあるはずがないのは分かっていますが^^;ちなみにゴビ砂漠を選んだのは「星の王子さま」のようなイメージで、砂の下に恐竜の化石やいろいろな宝物が隠されてる場所という意味が込められています。」 <2> 道徳と呟けばもう寂しくて砂山のトンネルは崩れた 「こちらも多少、観念的な部分のある歌なので理解しにくいかも知れませんね。これは心象世界の中で、砂場で砂の山を作り、その山にトンネルを掘っている状態を想像してもらえれば分かりやすいかと思います。砂山のトンネルって子供のときよく作りましたよね。そんな砂山のトンネルを掘りながら自分に欠けている「道徳」という言葉を口にした瞬間に、トンネルが崩れる…結局この歌のトンネルは完成せずに崩れてしまうわけですが、そう詠うことで物事が思い通りにいかない人生の失意の時間を表現してみたつもりです。」 解説記事(1)(Boye De Mente氏のブログ版・日英両国語版) 第2節(003-004) <3> 秘め事の一つや二つあるんだよ優等生のあの娘にだって 「こちらは優等生にみえる少女にだって大人の知らない秘め事(秘密)があるのだよという、ちょっと反骨精神のこもった一首です。これはかなり若いころに詠んだ歌なので、学校の教師や大人たちへのささやかな抵抗の意思のような感じで詠みました。ですから、「娘」となっていますが、これは僕自身の分身のような、若者たちの象徴としての存在だと思ってください。「一見、貴方たち大人にとって都合のいい僕でも、貴方たちの知らない顔も持っているのだよ」といった感じですね。」 <4> 君のつく嘘のすべてが輝いて僕の未来を照らしてたんだ 「この歌は「嘘」というお題で詠んだ歌ですが、恋人(女性)のつく嘘の数々を信じてふたりの未来の楽しい生活(結婚もふくめて)を想像していたという失恋の一首ですね。どんな嘘かと言われれば困ってしまいますが、たとえば「貴方のことが好き」と言いながらじつは他の男と二股を掛けていたとかそんな感じかな^^;いや、題詠なので実際にそんな経験があるわけではないですが(笑)まあ、だまされてたわけだけど、それでも幸せでしたっていう男の(僕の?)未練いっぱいの感じが出せればうれしいです。」 解説記事(2)(Boye De Mente氏のブログ版・日英両国語版) 第3節(005-006) <5> いくつかの夢を叶えていくつかの夢を奪ってゆく流れ星 「これも流れ星に願い事をするという習慣が日本以外にあるのかわからなかったので悩んだのですが^^;流れ星に祈った願って、当然叶うこともあれば叶わないこともありますよね。そんな願いが叶わなかった時のことを、『夢を奪ってゆく』と表現したものです。まあでも正確な意味が分からなくても、観念的な歌としても充分伝わるものがあるのではないかと自分では思っていますが」 <6> 真っ白に一直線にのびてゆく飛行機雲が空を引き裂く 「この歌は読んでそのまま、飛行機雲が白い線を描いて空を引き裂くように伸びてゆく様子を詠ったものです。「空を引き裂く」とあるように、どちらかというと失恋直後の絶望感に似たものを感じている時に見た飛行機雲に、このような感想をもったと理解して下されば分かりやすいかと思います。真っ白で一直線なものってプラスのイメージがありますが、そんな明るいものだからこそ、その飛行機雲が落ち込んでいる人間の心を容赦なく、引き裂いてゆく様子を表現してみたつもりです。まあ、表面上は単なる飛行機雲が伸びていくという情景歌と捉えて下さっても結構ですが」 解説記事(3)(Boye De Mente氏のブログ版・日英両国語版) 解説記事(3)(オリジナル版・日英両国語版) 第4節(007-008) <7> 駅の待合所はどことなく檻のようだねみんな奴隷のようだ 「これは短歌の新人賞で佳作に選ばれた連作のうちの一首です。「奴隷のようだ」という過激な結句がちょっと外国の人にどのように捉えられるのか不安な部分もありますが、連作の中で特別に選者の方に選ばれた五首のうちの一首なので、今回この歌を入れてみました。「待合所」としたのは定型に収めるためで、正確には「待合室」のことですね。内容としては単純に駅の待合室ってなんとなく収容所のような感じだな、と思ったのがきっかけで出来た歌です。まあ、自分も含めて人間すべてが自由に見えて、実は目に見えない大きな権力のようなものの奴隷なのではないかという意味も含めてあるつもりですが。」 <8> 夜に吹く口笛は魔を呼び込むと母は狂ったように叫んだ 「この歌はちょっと難しいでしょうか。日本では夜に口笛を吹くのは魔物を呼び込むから、してはいけないとよく言われるのですが、これはとくに外国の方にはちょっと理解出来ないかも知れませんね^^;まあ、日本の風習を知らない人にとってもちょっとファナティックな感じに魅力を感じてもらえるかと思い選んでみました。下の句はそんな詩的な感じを出すためにあえて過激に表現しています。」 解説記事(4)(Boye De Mente氏のブログ版・日英両国語版) 解説記事(4)(オリジナル版・日英両国語版) 第5節(009-010) <9> 消えてゆく星の瞬きかのようにあの人は神懸かってきれい 「こちらは恋歌です。自分では手の届かないような憧れの女性に対して、遠くから眺めているだけの片思いの一首ですが、星の輝きが実際には何億年も前の星が散ったときの光であるようにその女性もどこか神がかってこの世のものではないような美しさを秘めているといった感じの歌です。まあ、でも読み手がこの歌の人物を男性と取ってくれてもいっこうに構わないのですが…男性でも女性でも、まれに同性ですら心魅かれるような神懸かった魅力を持った人っていますよね(笑)」 <10> 儚くてそして愚かな夢だった君の心を奪おうなんて 「この歌は失恋の歌ですね。(なにか僕は失恋ばかりしているようですが^^;)好きな人に対してカッコつけてみたり、気取ってみたりといろいろな手段でアプローチしてみたれど、結局はその人には他に好きな男性がいて…そんな感じですね。これはそれほど難しい歌ではないのでなんとか理解してもらえるかな?」 |
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