「サミュエル・マックニーリー氏からの書簡」 |
解説、短歌:宿谷睦夫 「日常茶飯事を歌にする人もいるが、これらの歌を英訳して外国に紹介した人の話しを聞いたことがある。その人の話だと、「そんな日常茶飯事を歌にしてどこが美しいのですか」という反応が返ってきたという。欧米では「詩人とは預言者である」とまで言われていると聞く。欧米にはこのような観念があるということを考えれば、短歌の英訳を考える上で、日常茶飯事を詠んだ歌を対象にするのではなく、「花鳥風月」と呼ばれる自然を詠んだ歌を対象にするのが妥当であると私は考えている。私がアメリカで出版した「英文折句百人一首」はこの精神で貫かれている。これを読んだ読者は一様にして、共感賛嘆してくれた。その実際は拙著に譲りたいが、私の歌に共感賛嘆してくれた内の一人をここでご紹介したい。それはアメリカの言語学者で詩人のサミュエル・マックニーリーSamuel S. Mc Neely博士である。博士から戴いた返書に目を通して戴ければ、日本の伝統的な花鳥風月と呼ばれる自然を詠んだ歌を欧米に紹介するならば、欧米の優れた知性と感性を備えた教養人の共感を受けることは間違いないことがご理解戴けると思う。」 for Samuel S. Mc Neely(サムエル・マックリーニー)(米国詩人)寄稿者 (S)quirrels run about, 我館 (amu)sing me as well as 人目慰む (e)veryone, who stays 子栗鼠等も (l)ong in my own residence, 姿伏すとも (s)oon hide themselves stealthily. 声や隠るゝ (M)any beautiful 小鳥鳴く (c)amellias which are abloom 我庵近く (ne)ar my cottage where 咲く椿 (el)egant birdsongs are heard 訪ぬる人の (y)ield pleasure to visitors. 心慰む |
I recognize the sensitive soul of a true nature poet! By Samuel S. McNeely It is a great pleasure and rare distinction to have received the gift of your book, “100 Tanka poems for 100 People”. I enjoyed reading all of the poems, as well as your illuminating prefaces and explanations. In them I recognize the sensitive soul of a true nature poet in the long and honorable tradition of Japanese literature, which I was fortunate enough to encounter during the years of my living in Japan. And of course I am especially proud to be named in one of your “tankacrostices” amongst so many famous personages. As a poet I can understand the difficulty and the cleverness of weaving the names in the fabric of an English-language poem. In my case the focus of the tanka is on frisky squirrels, which is quite appropriate, as my house in New Orleans was surrounded by oak trees and the scampering, hiding, playful little animals provided an amusing sight all my days. Recently while camping in the mountainous forest of Utah I had occasion to enjoy the sight of many visiting hummingbirds. I wrote this little poem which resembles a waka or haiku and which I feel is closely related in spirit to the poems in your book: Tiny green finery In suspended fight Dipping its molecule of fuel Then hastily on its way. Many thanks and all good wishes, August 23, 2006 |
自然歌人の魂を見出す! サミュエル・マックリー二ー(米国詩人) 貴殿のご著著「百人一首折句」をご贈呈戴きましたことを大変な喜びと類稀な栄誉に存じます。貴殿の光輝く序章とその解説は勿論のこと、折句の全てを拝見させて戴きました。ご著著を拝見致しますと、私は在日中に沢山の日本文学に接し読破した経験から、貴殿のご著著にも日本文学の長く誉ある伝統の中で真の自然歌人の情緒に満ちた魂を見出すことが出来ました。そして、勿論、沢山の有名な著名人の為に詠まれた折句の中に私の名前が折り込まれた折句を発見して、特に光栄に思いました。英詩という織物の中に人の名前を織り込むのがどんなに困難であり、聡明な技巧を必要とするかを、私は詩人としてよく理解しているつもりです。私への詩歌について言えば、すばしこい栗鼠が焦点になります。その栗鼠は私にとって極めて相応しいものとなりました。と申しますのも、ニューオルリンズの私の家は樫木に囲まれ、ちょろちょろ走り回ったり、隠れたり、遊びまわる小さな動物を見ることで、私は毎日楽しく暮らしているからなのです。最近、ユタ州の山々の森でキャンプをしている間に、沢山のハチドリが飛び交っている光景を見る機会に出会いました。そこで、伝統的な日本の歌人が創作してきた和歌や俳句に準えて次の詩歌をしたためてみました。これは、少なからず、その精神において、ご著書にある詩歌の作風に少しでも近づき、それと関連しているように私は感じております。 晴れやかな緑の衣靡かせてしばしとてこそ蜜に戯むや |
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