小倉百人一首 短歌翻訳第4篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 4)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 4)

013 Emperor Yozeiin

Tsu ku ba ne no
mi ne yo ri o tsu ru
Mi na no ga wa
ko hi zo tsu mo ri te
fu chi to na ri nu ru


Water comes out from
between Mt. Tsukuba's peaks
and runs as a stream,
Minano, it seems my love
for you grows deep like this stream.



014 Toru Minamoto

Mi chi no ku no
shi no bu mo ji zu ri
ta re yu we ni
mi da re so me ni shi
wa re na ra na ku ni


I'm deeply upset
to receive your letter, like
untidy patterns
printed over the fine cloth
woven in the north area.



015 Emperor Koko

Ki mi ga ta me
ha ru no no ni i de te
wa ka na tsu mu
wa ga ko ro mo de ni
yu ki wa fu ri tsu tsu


When I go into
the meadows to gather fresh
vegetables for you
the snow has begun falling
and I notice flakes on my sleeves.

Reference: commentary post(2)



016 Yukihira Ariwara

Ta chi wa ka re
I na ba no ya ma no
mi ne ni o fu ru
ma tsu to shi ki ka ba
i ma ka e ri ko mu


Though I must leave here
for Inaba, my new post,
I'll return to you
if I hear you stand waiting
like pines on Mount Inaba.

Reference:
(9) Tanka in September (2000)平成12年


「小倉百人一首」第4篇

013陽成院(868-949) (第57代天皇)

筑波嶺の つくばねの
峰よりおつる みねよりおつる
みなの川 みなのがは
恋ぞつもりて こひぞつもりて
淵となりぬる ふちとなりぬる

(「筑波山の峰より落ちてくる水無川の水が積り積って、いつしか深い淵となるように、私の恋も仄かな思いが積り積って、思いの淵となって、貴方を深く愛してしまったことよ」という意味の歌で、歌を詠んで求婚する歌垣が行われたという筑波山という歌枕の修辞法を取り入れて恋の悩みを詠んだ歌です)


014源融(822-895) (嵯峨天皇の皇子)

陸奥の みちのくの
偲ぶもぢ摺り しのぶもぢずり
誰故に たれゆゑに
乱れ初めにし みだれそめにし
我ならなくに われならなくに

(「奥州の特産品である忍ぶ草の色素で摺り付けた乱れ模様の布のように、誰の為に心が乱れてしまったのだろうか。私のせいでは無く、皆な貴方が原因なのですよ」という意味の歌で、女性から愛情を疑うような歌が送られてきたのに対して、自分の愛を信じて欲しいと応えた歌です)


015光孝天皇(830-887) (第58代天皇)

君がため きみがため
春の野に出でて はるののにいでて
若菜摘む わかなつむ
わが衣手に わがころもでに
雪は降りつつ ゆきはふりつつ

(「君の為に早春の野に出て、若菜を摘んでいる私の袖には雪が降り続いている」という意味の歌で、若菜を篭に入れて、親しい人に送った時に添えた歌と言われています。現在でもお祝いの席で、花束贈呈が行われますが、草が萌え始める時、花が咲き始める時に持っている気が人に元気を与える最高の贈り物という考えが背後に伺えます)

右記参照: 解説(2)


016在原行平(818-893) 平城天皇の孫(兄)
立ち別れ たちわかれ
因幡の山の いなばのやまの
峰の生ふる みねにおふる
松とし聞かば まつとしきかば
今帰り来む いまかえりこむ

(「見送って下さるあなたと今ここで、別れて赴任地の因幡に行きますが、その因幡山の峰に生えている松、その『まつ』の名のように、あなたが私の帰りを『待って』いると聞いたならば、直ぐにでも帰って来ますよ」という意味の歌で、「往なば」と「因幡」、「松」と「待つ」の掛詞を用いた秀歌です)

下記参照:
第三章第 9節 九月(長月)「雁」(かり)掛詞の例歌


「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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