小倉百人一首 短歌翻訳第19篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 19)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 19)

073 Masafusa Oe

Ta ka sa go no
wo no he no sa ku ra
sa ki ni ke ri
to ya ma no ka su mi
ta ta zu mo a ra na mu


As cherry blossoms
begin to come to full bloom
upon the peaks of
high mountains in the distance,
I hope the mists never rise.



Reference: commentary post(4)
(6) Tanka in June  (2000)平成12年




074 Toshiyori Minamoto

U ka ri ke ru
hi to wo Ha tsu se no
ya ma o ro shi yo
ha ge shi ka re to wa
i no ra mu mo no wo


Cold hearted lady
who ignores me so deeply
as if a tempest
blew hard from Mt. Hatsuse
even if without a chance.




075 Mototoshi Fujiwara

Chi gi ri o ki shi
sa se mo ga tsu yu wo
i no chi ni te
a wa re ko to shi no
a ki mo i nu me ri


I have spent this year
uselessly as well, despite
the promise you made,
just like dew drops on mugwort
disappear so easily.




076 Tadamichi Fujiwara

Wa ta no ha ra
ko gi i de te mi re ba
hi sa ka ta no
ku mo yi ni ma ga fu
o ki tsu shi ra na mi


When I look forward
in the distance from the boat,
which I am rowing,
the white waves rise so deeply
that I mistake them for clouds.



Reference: commentary post(5)
(8) Tanka in August (2000)平成12年



「小倉百人一首」第19篇

073大江匡房(1041-1111) (赤染衛門の曾孫)

高砂の たかさごの
尾上の櫻 をのへのさくら
咲きにけり さきにけり
外山の霞 とやまのかすみ
たたずもあらなむ たたずもあらなむ

(「高い山の峰の櫻が咲いたことだよ。人里近い山の霞よ、どうかたちこめないで欲しい」という意味の歌で、「七五調」の韻律を作る句切れには「初句切れ」と「三句切れ」がありますが、この歌は「三句切れ」の歌で、これは歌の韻律に軽快で流麗な感じを与えるものです。この歌の詞書には、道長の曾孫・15代師道の邸宅での宴に「遥かに山の桜を望む」という題詠を課せられた時に詠んだ歌であると記されています。)

下記・右記参照: 解説(4)
第三章第 6節 六月(水無月)「夕立」(ゆうだち)


074源俊頼(1055-1129) (「金葉集」の選者)

憂かりける うかりける
人を初瀬の ひとをはつせの
山おろしよ やまおろしよ
はげしかれとは はげしかれとは
祈らぬものを いのらぬものを

(「私に無情であった人の心が私に向かうように、初瀬観音に祈ってはみたものの、その甲斐もなく、むしろ初瀬山から吹いてくる風が激しくなるように恋する人の風当たりは辛くなっていった。そうは祈らなかったのに。」という意味の歌で、冷たい人を靡かせようと祈っても甲斐が無かったという嘆きの歌です。)



075藤原基俊(1060-1142) (「新撰朗詠集」の選者)


ちぎりおきし ちぎりおきし
させもが露を させもがつゆを
いのちにて いのちにて
あはれ今年の あはれことしの
秋もいぬめり あきもいぬめり

(「076藤原忠通が約束して下さった維摩経を講ずる法会の講師にさせようとする恵みの露のような言葉を、命のように大切にして来たが、今年の秋の法会にも約束が果たされずに過ぎていってしまった」という意味の歌で、約束も果たされず、空しく秋が過ぎて行くという嘆きの歌です)



076藤原忠通(1097-1164) 藤原忠実の長男
わたの原 わたのはら
こぎいでて見れば こぎいでてみれば
久方の ひさかたの
雲ゐにまがふ くもゐにまがふ
沖つ白波 おきつしらなみ

(「海原に舟を漕ぎ出して見渡すと、雲と見分けがつかないような沖の白波であることよ」という意味の歌で、詞書によれば、「海上の遠望」という題詠の歌で、題意を十分に満たした歌です。百人一首の叙景歌の中で、屈指の秀歌と言えるでしょう。絵画的な景観もさることながら、広大な海原の気分に開放されていく雰囲気を醸し出しております。また、修辞法としては、「体言止め」や、「光」や「雲」に掛る「久方の」という枕詞が用いられています)解説(5)参照


下記・右記参照: 解説(5)
第三章第 8節 八月(葉月)「谷紅葉」(たにのもみじ)



「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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