小倉百人一首 短歌翻訳第16篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 16)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 16)

061 Ise no Taifu

I ni shi e no
Na ra no mi ya ko no
ya he za ku ra
ke fu(kyo) ko ko no he ni
ni ho hi nu ru ka na


How pretty they are!:
the double cherry blossoms
which come from Nara,
the capital, are now in
full bloom at the new palace.


Reference: commentary post(4)
(9) Tanka in September (2000)平成12年

(11) Tanka in November (2000)平成12年



062 Seisho-Nagon

Yo wo ko me te
to ri no so ra ne wa
ha ka ru to mo
yo ni a fu sa ka no
se ki wa yu ru sa ji


You'll never cheat me
no matter how you excuse,
like the mimicry
that cheated the barrier
guard in ancient China
by copying the cock-crow
if I will let you leave here.

Reference: commentary post(7)



063 Michimasa Fujiwara

I ma wa ta da
o mo hi ta e na mu
to ba ka ri wo
hi to zu te na ra de
i fu yo shi mo ga na

Now, I only can
pray to find a way to tell
you directly my
decision to renounce our
love when we next meet
instead of through another,
though there is so much to say.



064 Sadayori Fujiwara

A sa bo ra ke
U ji no ka wa gi ri
ta e da e ni
a ra wa re wa ta ru
se ze no a ji ro gi

As the deep mist, which
covers the Uji River,
begins to dissolve,
and wickerwork nets come out
here and there around the dawn.


Reference: commentary post(4)



「小倉百人一首」第16篇

061伊勢大輔(989-1060)高階成能の妻

古の いにしへの
奈良の都の ならのみやこの
八重桜 やへざくら
けふ九重に けふここのへに
匂ひぬるかな にほひぬるかな

(「昔の奈良の都の八重桜が、今日はこの宮中で色美しく咲き誇っています」という意味の歌で、毎年奈良から桜を献上する習わしになっていましたが、それを担当するのは優れた女房歌人でした。この時、紫式部の役でしたが、新参者の作者に役がまわり、その時詠んだのがこの歌でした)

下記・右記参照: 解説(4)
第三章第 9節 九月(長月)「雁」(かり)

第三章第11節 十一月(霜月)「初雪」(はつゆき)


062清少納言(966-1025) (「枕草子」の作者)

夜をこめて よをこめて
鳥のそらねは とりのそらねは
はかるとも はかるとも
よに逢坂の よにあふさかの
関はゆるさじ せきはゆるさじ

(「夜が深いのを隠して、鶏の声をまねて、だまそうとしても、逢坂の関は決して許さないでしょう」という意味の歌ですが、夜が深い内に帰った男の弁解を、切り返しながら、またの訪問を婉曲的に断わる気持を篭めて詠まれています。)

右記参照: 解説(7)


063藤原道雅(992-1054) 道隆の孫・伊周の子

いまはただ いまはただ
思ひ絶えなむ おもひたえなむ
とばかりを とばかりを
人づてならで ひとづてならで
言ふよしもがな いふよしもがな

(「今はただ、『貴方をあきらめる』ということだけでも、人を介してではなく直接貴方にお伝えする方法はないものだろうか」という意味の歌で、逢うことを禁止されて、「貴方のことをあきらめる」ということを言う為だけにでも貴方に会いたいといういちずな恋心を詠んだ歌です。)



064藤原定頼(995-1045) 藤原公任の長男

朝ぼらけ あさぼらけ
宇治の川霧 うぢのかはぎり
たえだえに たえだえに
あらはれわたる あらはれわたる
瀬々の網代木 せぜのあじろぎ

(「冬の夜が仄々と明けて行くにつれて、宇治川の川面に、立ち込めていた霧が段々と晴れ、その晴れた絶え間より、魚を取る網代木が現われ見えてきたことよ」という意味の歌で、宇治川の早朝の情景を素直に詠んだ歌です。前述の如く、歌によく詠まれる「梅の鶯」と対になるものが、この「宇治川の網代木」です。柿本人麻呂の歌以来、網代木は宇治川には欠かせない風物となったようです。「源氏物語」を始め、「蜻蛉日記」「更級日記」などにもその記述が見られます。また、宇治は藤原鎌足から12代目の藤原兼家の別荘や宇治平等院などでも知られている名跡でもあります。)

右記参照: 解説(4)



「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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