小倉百人一首 短歌翻訳第6篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 6)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 6)

021 Harutoshi Yoshimine

I ma ko mu to
i hi shi ba ka ri ni
na ga tsu ki no
a ri a ke no tsu ki wo
ma chi i de tsu ru ka na


As you didn't arrive
to my cottage to tell me
that you'd come soon,
I’ve stayed till I saw the moon,
which rises around the dawn.



022 Yasuhide Bunya

Fu ku ka ra ni
a ki no ku sa ki no
shi wo ru re ba
mu be ya ma ka ze wo
a ra shi to i fu ra mu


The wind which blows from
the high mountains must be called
the tempest, because
it makes all the leaves of trees
and grasses of autumn fade.



023 Chisato Oe

Tsu ki mi re ba
chi ji ni mo no ko so
ka na shi ke re
wa ga mi hi to tsu no
a ki ni wa a ra ne do


Whenever I watch
the moon shine in the deep sky
at night in autumn,
it reminds me of sad things
though it shines on everyone.

Reference:
(10) Tanka in October (2000)平成12年



024 Michizane Sugawara

Ko no ta bi wa
nu sa mo to ri a he zu
ta mu ke ya ma
mo mi ji no ni shi ki
ka mi no ma ni ma ni


May god, who rules
this mountain, Tamuke, which
I visited with
the Emperor, permit me,
without Nusa, which
I should carry without fail:
I hope you will take
the crimson leaves now scattered
here and there as the Nusa.

(Nusa means an amount of tiny sheets of paper cut into pieces, which all pilgrims should carry without fail in order to pray to god.)
「小倉百人一首」第6篇

021良峯玄利(?-910?)素性法師(36歌仙の一人)

今来むと いまこむと
いひしばかりに いひしばかりに
長月の ながつきの
ありあけの月を ありあけのつきを
待ちいでつるかな まちいでつるかな

(「すぐに行きましょうと貴方が言ってよこしたばかりに、それを信じて待っていたのに、結局来なかったので、この九月の有明の月を待ち続けてしまいましたよ」という意味の歌で、男性である作者が、男を待つ女の立場で詠んだ歌です。当時は、創作的、遊戯的に歌が詠まれました)


022文屋康秀(?-885) (六歌仙の一人05)

吹くからに ふくからに
秋の草木の あきのくさきの
しをるれば しをるれば
むべ山風を むべやまかぜを
嵐といふらむ あらしといふらむ

(「吹き下ろすと直ぐに、秋の草木が萎れてしまうので、なるほど、山から吹いて来る風を嵐と言うのだろうか」という意味の歌で、秋の草木をたちまちにして萎れさせる山から吹いてくる風の荒々しさを詠んだ歌です。ここでは「嵐」と「荒々しい」とが掛詞にもなっています。)



023大江千里(?-946-?)

月見れば つきみれば
千々に物こそ ちぢにものこそ
悲しけれ かなしけれ
我身一つの わがみひとつの
秋にはあらねど あきにはあらねど

(「月を見ると、全ての物が皆んな悲しく感じられることだ。秋は私一人だけにあるのでないのだけれど」という意味の歌ですが、作者は「秋は誰にでも訪ずれるのではあるが、やはり私一人を苦しめる為に秋があるように思う」といった孤独の悲しさを響かせています)

下記参照:
第三章第10節 十月(神無月)「時雨」(しぐれ)



024菅原道真(845-903)

このたびは このたびは
幣もとりあへず ぬさもとりあへず
手向山 たむけやま
もみじの錦 もみじのにしき
神のまにまに かみのまにまに

(「今度の旅は、陛下のお供をする手向山への急な旅だったので、そこにお鎮まりになっている神様にご挨拶するのに必要な幣も用意することも出来ずに出かけてしまったが、ちょうど幣の代わりになるように紅葉が散り乱れているので、どうか神様この紅葉を幣の代わりと受け取って戴いてご挨拶をさせて戴きますので、そのようにお受け取り下さい」という意味の歌で、神職を家業としている人として、機転の利いた歌になっています)




「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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