小倉百人一首 短歌翻訳第23篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 23)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 23)

089 Princess Shokushi

Ta ma no wo yo
ta e na ba ta e ne
na ga ra he ba
shi no bu ru ko to no
yo wa ri mo zo su ru


Should my life be to
end just now, let it be so!:
my own hidden love
would be known to everyone
and I not bear to hide it.



090 Inbumonin no Taifu

Mi se ba ya na
Wo ji ma no a ma no
so de da ni mo
nu re ni zo nu re shi
i ro wa ka wa ra zu

I wish to show you
my sleeves wet and dyed by tears,
which I can never
stop from my eyes, endlessly
like Ojima fishers' sleeves.




091 Yoshitsune Fujiwara

Ki ri gi ri su
na ku ya shi mo yo no
sa mu shi ro ni
ko ro mo ka ta shi ki
hi to ri ka mo ne mu


This cold frosty night,
when the crickets are chirping,
I must sleep alone
on my side wearing thin robes
on a cold sedge sleeping mat.


Reference:
(9) Tanka in September (2000)平成12年


092 Nijyoin-Sanuki

Wa ga so de wa
shi ho hi ni mi e nu
o ki no i shi no
hi to ko so shi ra ne
ka wa ku ma mo na shi

My sleeves will never
dry off because of the tears
which I always shed
though my love does not see them,
like offshore stones at ebb-tide.


「小倉百人一首」第23篇

089式子内親王(1153?-1201) 後白河天皇の第3皇女

玉のをよ たまのをよ
たえなばたえね たえなばたえね
ながらへば ながらへば
忍ぶることの しのぶることの
弱りもぞする よわりもぞする

(「(私の)命よ。絶えてしまうものなら絶えてしまっておくれ。このまま生き永らえていくなら、(ますます恋心が強くなって)心に秘めていることが弱ってしまうかもしれないから。それにその思いが人目については困ってしまうから」という意味の歌で、これも「忍恋」という題詠の歌です。)


090殷富門院大輔(1130-1200?)原信成の娘

見せばやな みせばやな
雄島のあまの をじまのあまの
袖だにも そでだにも
ぬれにぞぬれし ぬれにぞぬれし
色はかはらず いろはかはらず

(「(悲しみの余り流した涙で色の変わった私の袖を)貴方に見せたいものです。雄島の漁師の袖でも波に濡れても色は変わらないのに」という意味の歌で、源重之の詠んだ「松島や雄島の磯にあさりせし海女の袖こそかくは濡れかし」を本歌として詠んだ歌で、「濡れるだけでなく、色まで変わった」と本歌の内容を一歩発展させて詠んだところに趣向が凝らされています)


091藤原良経(1169-1206)忠通の孫

きりぎりす きりぎりす
鳴くや霜夜の なくやしもよの
さ莚に さむしろに
衣かたしき ころもかたしき
独りかも寝む ひとりかもねむ

(「こおろぎが鳴いている霜の降りた夜に、粗末な敷物の上で、着物を着たまま独り寝るのかなあ(ああなんと侘しいことか)」という意味の歌で、最高の位を得た人が庶民の気持になって詠んだ歌で、003柿本人麻呂の歌と伊勢物語63段の「さ莚に衣かたしき」の言葉の入った恋歌を本歌とした歌でもあります)

下記参照:
第三章第 9節 九月(長月)「雁」(かり)


092二条院讃岐(1141?-1217?)源頼政の娘

わが袖は わがそでは
潮干にみえぬ しほひにみえぬ
沖の石の おきのいしの
人こそしらね ひとこそしらね
かわくまもなし かわくまもなし

(「私の着物の袖は、引き潮の時には見えなくなってしまう沖の石のように、私の愛するあの人には気付いてもらえないだろうけれども、(報われない悲しみの涙で)乾くことがありません」という意味の歌で、「寄石恋(いしによせるこい)」という題への歌です)



「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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