小倉百人一首 短歌翻訳第14篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 14)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 14)

053 Mother of Michitsuna

Na ge ki tsu tsu
hi to ri nu ru yo no
a ku ru ma wa
i ka ni hi sa shi ki
mo no to ka wa shi ru


Do you never know
how long night lasts before
you open the door
for me to wait sleeping and
weeping for you, I wonder?


Reference: commentary post(6)




054 Takako Fujiwara

Wa su re ji no
yu ku su we ma de wa
ka ta ke re ba
ke fu(kyo) wo ka gi ri no
i no chi to mo ga na


I would rather end
my life today to keep long
his words in my heart:
it's impossible to make
his promise sure for ever.

Reference: commentary post(6)




055 Kinto Fujiwara

Ta ki no o to wa
ta e te hi sa shi ku
na ri nu re do
na ko so na ga re te
na ho ki ko e ke re


How long has the time
been passing since I heard of
the rumour, the sound
of the waterfall has vanished?
But it still sounds in my ears.




056 Izumi-Shikibu

A ra za ra mu
ko no yo no ho ka no
o mo hi de ni
i ma hi to ta bi no
a fu ko to mo ga na


I would like to meet
you again to keep your face
as a memento
to bring to the other world
for when I pass away soon.


「小倉百人一首」第14篇

053右大将道綱母(937?-995) (「蜻蛉日記」の作者)

嘆きつつ なげきつつ
ひとり寝る夜の ひとりぬるよの
あくるまは あくるまは
いかに久しき いかにひさしき
ものとかはしる ものとかはしる

(この歌は「あなたの訪れがなくて、嘆き悲しみながら、一人で寝る夜が明けるまでの間は、どのようなものか、ご存知でしょうか。ご存知ではないでしょう」という意味の歌で、日記によりますと、三夜続いて夫・兼家が来ないので後をつけさせると、町の小路の女の所に通っていた。二・三日にした明け方、戸を叩く人があって、それを夫と知りつつ門を開けさせず返したので、いつもより丁寧にこの歌を書き送った作であるとあります。)

右記参照: 解説(6)


054儀同三司母(?-996) 高階成忠(923-998)の娘

忘れじの わすれじの
ゆくすゑまでは ゆくすゑまでは
かたければ かたければ
今日をかぎりの けふをかぎりの
命ともがな いのちともがな

(「『お前のこは忘れないよ』と言って愛の誓いをしてもらったけど、将来それがずっと続くものでもないので、逢えてそのお言葉を戴いた今日を限りとして、命を絶えてしまいたいものです」という意味の歌で、初めて愛が結ばれた絶頂期に、その愛が壊れない内に命を終わりにしたいという純愛の歌です)

右記参照: 解説(6)


055藤原公任(966-1041) (「和漢朗詠集」の編者)

滝の音は たきのおとは
たえて久しく たえてひさしく
なりぬれど なりぬれど
名こそ流れて なこそながれて
なほ聞こえけれ なほきこえけれ

(「(大覚寺に伝わる、古い)滝の音は、絶えて聞けなくなってから、久しいが、その名高い評判だけは、世に流れ伝わって、今も聞えているよ」という意味の歌で、「滝・流れ」「音・聞こえ」「絶え・流れ」のそれぞれの縁語、並びに3・4・5句の頭に「な」の音を重ねる修辞法を駆使した歌と言えます)


056和泉式部(978-?)(「和泉式部日記」の作者)

あらざらむ あらざらむ
この世のほかの このよのほかの
思ひ出に おもひでに
今ひとたびの いまひとたびの
あふこともがな あふこともがな

(「存在するかどうかも分からない来世での思い出に、もう一度貴方とお逢いしたいものです」という意味の歌で、愛する人を何人も亡くし、生きてもう一度逢えていればという思いを歌にしたものと思われます。最後は、藤原保昌に嫁して、彼の任地・丹後に下って行きますが、京都にいた娘・060小式部内侍の「大江山・・・」の歌はここから生まれて来ます。又、お能「東北(とうぼく)」の主人公でもあり、お能の世界では歌の名手故に成仏した御魂の持ち主として知られています)


「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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