小倉百人一首 短歌翻訳第25篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 25)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 25)

097 Teika Fujiwara

Ko nu hi to wo
Ma tsu ho no u ra no
yu fu na gi ni
ya ku ya mo shi ho no
mi mo ko ga re tsu tsu

I wait and wait for
my own love, who never comes
though I long for her,
my heart, wanting my love, burns
like the seaweed burned
on the Matsuho bay shores
this evening to extract salt.



098 Ietaka Fujiwara

Ka ze so yo gu
Na ra no o ga wa no
yu fu gu re wa
mi so gi zo na tsu no
shi ru shi na ri ke ru

The evening, on which
a breeze rustles the oak leaves
along a streamlet
in Nara, is cool as if
autumn has arrived
although it is still summer:
ceremonies of
purification, proof of
summer, are held beside it.



099 Emperor Gotobain

Hi to mo wo shi
hi to mo u ra me shi
a ji ki na ku
yo wo o mo fu yu we ni
mo no o mo fu mi wa


I have been upset
by everything all the time
these several years,
either yearning for someone
or blaming others deeply.



100 Emperor Jyuntokuin

Mo mo shi ki ya
fu ru ki no ki ba no
shi no bu ni mo
na ho a ma ri a ru
mu ka shi na ri ke ri


Whenever I see
the ferns, which grow under eaves
upon the palace,
they remind me of the time
when royals were prosperous.


「小倉百人一首」第25篇

097藤原定家(1162-1241)(新古今集の撰者)

こぬ人を こぬひとを
まつほの浦の まつほのうらの
夕なぎに ゆふなぎに
焼くやもしほの やくやもしほの
身もこがれつつ みもこがれつつ

(「待っても来ない恋人を持つ私は、松帆の浦の夕凪の時、塩を取る時に焼く藻塩草のように、私の身が恋の思いで焦がれているようだ」という意味の歌で、松帆の「まつ」と恋人を「まつ」、藻塩草が「焼きこがれる」と人に「恋こがれる」という掛詞や「藻塩」と「こがれ」の縁語を使って詠んだ秀歌です)



098藤原家隆(1158-1237) (新古今集の撰者)

風そよぐ かぜそよぐ
ならの小川の ならのおがはの
夕暮れは ゆふぐれは
みそぎぞ夏の みそぎぞなつの
しるしなりける しるしなりける

(「風が楢の木に吹いているならの小川では、夏であることを示している禊が行われている」という意味の歌で、秋の到来に心弾ませながらも、過ぎ去って行く夏を惜しみながら、季節の移り変わる情景を詠んだ歌です。「楢の木」と「奈良の小川」と「なら」の掛詞を用い、「みそぎするならの小川の川風にいのりぞわたる下に絶えじと」と「夏山のならの葉そよぐ夕暮れは今年も秋のここちこそすれ」の2首を本歌として、気品のある一首に仕上げた秀歌です)



099後鳥羽院(1180-1239) 高倉天皇の第4皇子

人もをし ひともをし
人もうらめし ひともうらめし
あぢきなく あぢきなく
世を思ふゆゑに よをおもふゆゑに
物思ふ身は ものおもふみは

(「世の中をつまらないと思い、物思いに沈む私にとっては、ある時は人が愛しく思われることもあるが、またある時は恨めしく思われることもある」という意味の歌で、鎌倉幕府との対立が深まり、幕府に対して反旗を翻した「承久の乱」を9年後に控えていた時の歌です)


100順徳院(1197-1242) 後鳥羽天皇の第3皇子

ももしきや ももしきや
ふるき軒ばの ふるきのきばの
しのぶにも しのぶにも
なほあまりある なほあまりある
昔なりけり むかしなりけり

(「この宮中の古く荒れた軒端に生えている忍ぶ草を見るにつけても、いくら偲んでも偲び尽くせないほど恋しい昔の御世であったことよ」という意味で、「承久の乱」を5年前、皇室が幕府に押さえられ衰微した状況を嘆き、感傷的懐古的に昔の平穏な時代を懐かしんで詠んだ、作者が20歳の時に詠んだ歌です)



「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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