小倉百人一首 短歌翻訳第22篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 22)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 22)

085 Monk Shune

Yo mo su ga ra
mo no o mo fu ko ro wa
a ke ya ra de
ne ya no hi ma sa he
tsu re na ka ri ke ri


As my lover is
so heartless that not only
do I bear a grudge
against him all the night but
even to the door ajar.


086 Monk Saigyo

Na ge ke to te
tsu ki ya wa mo no wo
o mo wa su ru
ka ko chi ga ho na ru
wa ga na mi da ka na

Though my face looks sad
and a tear runs down my cheek
by your heartless deed
under the moon this evening,
most people, who don't
know the reason, think the moon's
shining compels me to weep.






087 Monk Jyakuren

Mu ra sa me no
tsu yu mo ma da hi nu
ma ki no ha ni
ki ri ta chi no bo ru
a ki no yu fu gu re


The mist which arose
before the raindrops upon
leaves of podocarps,
which stand in the deep mountains,
dries off this autumn evening.


Reference: commentary post(5)



088 Kokamonin no Beto

Na ni wa e no
a shi no ka ri ne no
hi to yo yu we
mi wo tsu ku shi te ya
ko hi wa ta ru be ki

Though I spent one night
with you only for a while,
like the reed stubble
in Naniwa Bay is short,
should I then devote
my endless longing to you
as long as I am alive?

「小倉百人一首」第22篇

085俊恵法師(1113-?)(鴨長明の歌の師)

夜もすがら よもすがら
物思ふころは ものおもふころは
明けやらで あけやらで
閨のひまさへ ねやのひまさへ
つれなかりけり つれなかりけり

(「一晩中、(無情な人を恋慕って)思い嘆いている頃は、夜も中々明けきらないで、寝屋の板戸までが(朝の光を漏らしてくれないので)思いやりのないように思われることだ」という意味の歌で、男性が女性の立場に立って詠んであげた歌です。女が男を待つ時代、男が来てくれない辛さを詠んだ歌です)


086西行法師(1118-1190) (「山家集」の作者)

なげけとて なげけとて
月やは物を つきやはものを
思はする おもはする
かこち顔なる かこちがほなる
わが涙かな わがなみだかな

(「月が嘆けと言って、物思いをさせるのだろうか。そうではないのに、月にかこつけて、無情な人を恨み切れずに、自分の愚かさに流れる涙よ」という意味の歌で、美しいはずの月を眺めても涙がこぼれるほどの恨めしい気持を詠んだ歌です)



087寂蓮法師(1139-1202) (新古今集の撰者)

村雨の むらさめの
露もまだひぬ つゆもまだひぬ
まきの葉に まきのはに
霧たちのぼる きりたちのぼる
秋の夕暮れ あきのゆふぐれ

(「秋の夕暮れ時、さっと降った村雨が上がり、その露が常緑樹の槙の葉にまだ残って乾かない内に、もう霧が立ち上って来た」という意味の歌で、初秋の清々しい風景を描いた作品です。この歌を秋の寂しい情景と捉える人もいますが、初秋の夕暮れ、午後から降り始めた雨がさっと上って、すぐさま霧が立ち込めてくる情景を何度も経験したことのある者にとっては、寂しいどころか、爽やかな情景を連想させてくれる歌でもあります。)

右記参照: 解説(5)


088皇嘉門院別当(?-1178-?) 源俊隆の娘

難波江の なにはえの
芦のかりねの あしのかりねの
ひとよゆゑ ひとよゆゑ
みをつくしてや みをつくしてや
恋ひわたるべき こひわたるべき

(「難波の入り江の芦の刈り根の一節のような、短い旅の仮寝の一夜を過ごした為に、身を尽くし、命を捨てるほどに、貴方を恋い続けることになるのであろうか」という意味の歌で、「旅宿逢恋」という題詠の歌です。「恋というものは一夜の契りを結んだだけでも思い続けずにはいられないものだ」という内容を詠んだもので、必ずしも自分の体験を詠んだものではなく、古典短歌の題詠にしばしば見られる詠み方の一つです)



「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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