小倉百人一首 短歌翻訳第21篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 21)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 21)

081 Sanesada Fujiwara

Ho to to gi su
na ki tsu ru ka ta wo
na ga mu re ba
ta da a ri a ke no
tsu ki zo no ko re ru


When I look of in
the direction that cuckoos
call to each other,
only the pale moon remains
at dawn instead of their shades.


Reference: commentary post(5)





082 Atsuyori Fujiwara

O mo hi wa bi
sa te mo i no chi wa
a ru mo no wo
u ki ni ta he nu wa
na mi da na ri ke ri


My own tears won’t stop
but I will live no matter what;
I'm disappointed by
my love's heartless behaviour
although I never give up.



083 Shunzei Fujiwara

Yo no na ka yo
mi chi ko so na ke re
o mo hi i ru
ya ma no o ku ni mo
shi ka zo na ku na ru

To escape sorrow
I entered the deep mountains,
but in vain because
deer also cry out as if
to say this is not the way.




084 Kiyosuke Fujiwara

Na ga ra he ba
ma ta ko no go ro ya
shi no ba re mu
u shi to mi shi yo zo
i ma wa ko hi shi ki

Could I be relaxed
in the future, I wonder
if I live longer?
I now recall those times which
I had once thought so bitter.




「小倉百人一首」第21篇

081藤原実定(1139-1191)公能の一男

ほととぎす ほととぎす
鳴きつる方を なきつるかたを
ながむれば ながむれば
ただありあけの ただありあけの
月ぞ残れる つきぞのこれる

(この歌は「待ち侘びていた郭公が鳴いたその方向を眺めると、郭公の姿は見えないが、ただ有明の月が残っているばかりであった」という意味の歌です。卯の花と並んで、この郭公は初夏の清々しい爽やかな気分を連想させる代表な言葉ですが、待ちに待った郭公の初音を聞いた喜びと、初夏の爽やかな早朝の情景を詠んだ歌になっております。修辞法を用いずに、聴覚と視覚の巧みな組み合わせ、広大な空間と瞬間の時間の組み合わせが見事な歌でもあります)

右記参照:解説(5)


082藤原敦頼(1090-1182) 道因法師

思ひわび おもひわび
さてもいのちは さてもいのちは
あるものを あるものを
憂きにたへぬは うきにたへぬは
涙なりけり なみだなりけり

(「(つれない人を)思い嘆いて、それでも命はあるのに、辛さにこらえきれないのは涙である」という意味の歌で、「辛さで命は尽きないのに、涙は尽きずに流れ続ける」と命を亡くすほどの苦しみに耐えている様子を詠んだ歌です)



083藤原俊成(1114-1204) (「千載集」の選者)

世の中よ よのなかよ
道こそなけれ みちこそなけれ
思ひ入る おもひいる
山の奥にも やまのおくにも
鹿ぞ鳴くなる しかぞなくなる

(「世の中というものは辛さを逃れる方法は何ものだ。深く思いつめて分け入った山の奥にも、(やはり辛さがあるのか)鹿が悲しい声で鳴いていた」という意味の歌で、「世の中の苦しみ辛さは逃れる術が無い」ということを歌の頂点を極めた作者が詠んでいるだけに、人に「何とか生きなければならない」ということを言うのに説得力を持った歌です)


084藤原清輔(1104-1177) 藤家顕輔の次男

ながらへば ながらへば
またこのごろや またこのごろや
しのばれむ しのばれむ
憂しと見し世ぞ うしとみしよぞ
今は恋しき いまはこひしき

(「(行く末)生き永らえていたならば、またやはり、(辛いことの多い)今のこの頃のことも懐かしく思い出されるだろうか。かつて、辛いと思っていた時代が、今では恋しく思われるのだから」という意味の歌で、「辛いことがあってもいつかは良かったと思いえる時代が来るだろう」という将来への希望をもって、世の辛さに耐え忍んでいこうという、読者にも希望を与える前向きな歌です)



「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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