小倉百人一首 短歌翻訳第17篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 17)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 17)

065 Sagami

U ra mi wa bi
ho sa nu so de da ni
a ru mo no wo
ko hi ni ku chi na mu
na ko so wo shi ke re

Although the tear, which
falls because of my sorrow,
does not ruin my sleeves,
I'm so disappointed now
I hear of your fickleness.



066 Monk Gyoson

Mo ro to mo ni
a wa re to o mo he
ya ma za ku ra
ha na yo ri ho ka ni
shi ru hi to mo na shi

I appreciate
cherry blossoms which are in
bloom on this mountain:
though no one shares my feeling,
all alone, except for you.




067 Suou Naishi

Ha ru no yo no
yu me ba ka ri na ru
ta ma ku ra ni
ka hi na ku ta ta mu
na ko so wo shi ke re

Once I accept to
spend this night like a spring dream
sheltered in your arms,
I would regret the rumours,
preventing me from
meeting my true parter who
bring me happiness, which come.






068 Emperor Sanjyoin

Ko ko ro ni mo
a ra de u ki yo ni
na ga ra he ba
ko hi shi ka ru be ki
yo wa no tsu ki ka na

If I am alive
after I abdicate and
pass my throne onto
another against my will,
I'll always recall
watching the full moon tonight:
I live on in this harsh world
despite my expectation.

「小倉百人一首」第17篇

065相模(998?-1061?)大江公資の妻

うらみわび うらみわび
ほさぬ袖だに ほさぬそでだに
あるものを あるものを
恋にくちなむ こひにくちなむ
名こそをしけれ なこそをしけれ

(「無情な男を恨んで涙が乾く暇も無い袖さえはあるのに、恋の浮き名の為に、私の評判は無くなってしまうかもしれないなんて、なんと惜しいことでしょう」という意味の歌で、男に捨てられた恋の恨み、世間の評判の失墜の両方を嘆き悲しんで詠んだ歌です)


066前大僧正行尊(1055〜1135)(天台座主)
もろともに もろともに
あはれと思へ あはれとおもへ
山桜 やまざくら
花よりほかに はなよりほかに
しる人もなし しるひともなし

(「私がそなたを懐かしむのと一緒に、そなたも、私のことを思っておくれ、山桜よ。そなたより他には私を理解してくれる人とても居ないのだから。」という意味の歌で、山桜にさえ、訴えなければならないほど孤独な悲しみを詠んだ歌です。出家僧でありながら、孤独に苦しむことが素直に詠まれています。)


067周防内侍(1037-1109)平仲子
春の夜の はるのよの
ゆめばかりなる ゆめばかりなる
手枕に たまくらに
かひなくたたむ かひなくたたむ
名こそをしけれ なこそをしけれ

(「春の夜の夢ほどの短い貴方との契りの為に、その甲斐も無く浮名が立ってしまうのが惜しいことですよ」という意味の歌で、一夜の契りを迫った男への断りの歌です。詞書によれば、「二条院で貴族たちが語らっていた夜、ふと疲れた周防内侍が『枕が欲しい』と言ったところ、藤原忠家が『これを枕に』と御簾の下から腕を差し出してきたため詠んだ」とあります。当時は、一夜の契りを結んだだけで、一生の生活が保障されるという時代でしたから、「身分の低い貴方との噂で、もっと位の高い人との縁が無くなってしまうのが惜しまれることですよ」という意味合いも篭められています。当時の女性は男の言いなりになるということもなく、女性も男性以上に自分の好みの異性を選択していたことが伺われる歌です)


068三条院(976-1017) 冷泉天皇の第二皇子
心にも こころにも
あらでうき世に あらでうきよに
ながらへば ながらへば
恋しかるべき こひしかるべき
夜半の月かな よはのつきかな

(「死んでしまいたいばかりの辛いこの世に、もし生き永らえていたら、(その時には)今晩見たこの美しい月を恋しいなあと思うに違いありません」という意味の歌で、藤原道長から不本意にも天皇の位を、敦成親王(道長の娘・彰子の子)に譲るように迫まられて、苦しんでいた時に詠んだ歌です。)


「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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