小倉百人一首 短歌翻訳第10篇
解説・翻訳:宿谷睦夫 英文添削:ブルース・ワイマン
監修:ボイエ・ラファイエット・デイ・メンテ

“100 tanka poems by 100 poets” (Chapter 10)
Compiled by Teika Fujiwara
translated by Mutsuo Shukuya


Translator: Mutsuo Shukuya himself
Auditor: Bruce Wyman
Supervisor: Boye Lafayette De Mente


“100 tanka poems by 100 poets”(Chapter 10)

037 Asayasu Funya

Shi ra tsu yu ni
ka ze no fu ki shi ku
a ki no no wa
tsu ra nu ki to me nu
ta ma zo chi ri ke ru


When the wind blows hard
on the autumn meadows, where
the white dew drops lie
upon each and every leaf,
which are all scattered
like the gems on a necklace
fallen off of the core thread.




038 Ukon

Wa su ra ru ru
mi wo ba o mo wa zu
chi ka hi te shi
hi to no i no chi no
o shi ku mo a ru ka na


I would not worry
about myself even if
you abandoned me,
but I can't bear your sad fate
to be punished by the gods.



039 Hitoshi Minamoto

A sa ji fu no
o no no shi no ha wa
shi no bu re do
a ma ri te na do ka
hi to no ko hi shi ki


I have wavered on
whether I'd propose to you
or not until now,
but I can no longer bear
not showing you my true heart.





040 Kanemori Taira

Shi no bu re do
i ro ni i de ni ke ri
wa ga ko hi wa
mo no ya o mo fu to
hi to no to fu ma de


Even though I hide
my own heart to love someone,
my face seems to show:
whoever I meet asks me,
“Are there something to troble?”



「小倉百人一首」第10篇

037文屋朝康(?-902-?)(六歌仙の一人06)

白露に しらつゆに
風の吹きしく かぜのふきしく
秋の野は あきののは
つらぬきとめぬ つらぬきとめぬ
玉ぞ散りける たまぞちりける

(「(草葉の)白露に、風がしきりに吹いている秋の野には、紐に通して止めていない玉が散り零れるているようである」という意味の歌で、秋の野辺に起る典型的な情景を詠んでいます。二十四節季に「白露」「寒露」「霜降」「小雪」「大雪」ともあるように、空中の水分は、秋から冬にかけて、露、霜、雪、氷と変化し、古典和歌ではそれぞれが歌の題になっています)



038右近(?-946-?)藤原季縄の娘

忘らるる わすらるる
身をば思はず みをばおもはず
ちかひてし ちかひてし
人の命の ひとのいのちの
惜しくもあるかな おしくもあるかな

(「自分のことが貴方に忘れられてしまう身の辛さは何とも思いませんが、神に誓って私が好きだと言った貴方が神罰にでもあって命を縮められはしないかとその命が惜しまれることですよ」という意味の歌で、いくら冷たくされても、我が身よりも相手の男の身を案じる崇高な愛の歌でもあります)


039源等(880-951) 嵯峨天皇の曾孫

浅茅生の あさぢふの
小野の篠原 をののしのはら
しのぶれど しのぶれど
あまりてなどか あまりてなどか
人の恋しき ひとのこひしき

(「私は思い忍んでいるけれども、どうにも耐え切れない。どうして、貴方がこれほど恋しく思われるのだろう」という意味の歌で、「忍びきれない恋心」を詠んだもですが、これは本歌取りの歌で、本歌は読み人しらずの「浅茅生の小野の篠原しのぶとも人知るらめや言ふ人なしに」という歌で、作者はこの本歌の序詞の三句までを取り込んで詠んでいます。撰者・定家の歌にも、本歌の三句までを取り込ん歌もあるのですが、定家は後に書いた歌論の中では、「本歌取り」の原則を二句に限ると規定しました)


040平兼盛(?-990)(三十六歌仙の一人12)

忍ぶれど しのぶれど
色に出でにけり いろにいでにけり
わが恋は わがこひは
物や思ふと ものやおもふと
人の問ふまで ひとのとふまで

(「ひそかに隠していたけれど、私の恋は顔色に表れてしまったよ。物思いをしているのかと、人が尋ねるほどに」という意味の歌で、「隠していた恋が顔に表れるようになったという恋心」を詠んだ歌です。「隠していた恋が人目に曝されてしまった」という歌は次の041壬生忠見の歌と合わせて、「天徳4年内裏歌合」の結びを飾る歌として古来有名になっていると言います)



「小倉百人一首入門」(目次)
100 Tanka Poems by 100 Poets Contents


古典短歌講座(第1版)
Classical Tanka composition in English (1)


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