短歌入門部屋
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http://tanka.ikaduchi.com/
どなたでも短歌を自由にはじめられる初心者用の短歌入門部屋です。
(筆:黒路よしひろ)

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【短歌の基本6】

【文語】
「文語(ぶんご)」とは文字通り文章を書くときなどに使う、書き言葉のことです。
といっても、現代では短歌や俳句などの世界でしか用いられなくなったために、すぐにピンと来る方のほうが少ないかとも思いますが。

あたためしミルクがあましいづくにか最後の朝餉食(は)む人もゐむ  (大西 民子)

たとえばこの文語短歌の「あたためし」などは口語では「あたためた」ですよね。
同じように「あまし」も口語では「あまい」、「食む」は「食べる」です。

あたためたミルクがあまいどこかでは最後の朝食食べる人もいる(だろう)

ちょっと無理のある表現になってしまいましたが、無理に口語に訳すならこんなふうになるでしょうか。

普段使っている「口語」が「文語」ではどのようになるのかは、「広辞苑」などの辞書で調べればすぐに分かります。
たとえば「比べる」で調べれば…

【比べる・較べる・競べる】
《他下一》「文」くら・ぶ(下二)
以下略

となっています。
(文語や旧仮名を調べるために、広辞苑などの入った電子辞書が一台あると便利だと思います。)
この「文」と言うのが文語のことで、「比べる」の文語・終止形は「くらぶ(比ぶ)」だと分かるわけです。
ちなみに文語については、短歌入門部屋の「短歌の文法」も多少参考になるかと思います。
あわせて読んでみてください。


あとの「口語」のところでまとめて述べますが、文語は口語に比べて表現の形式が豊富で、微妙な感情を伝える手段として非常に優れています。
また、口語新仮名が持つ矛盾点(これについては次回の「旧仮名と新仮名について」で述べるつもりです)のようなものもありません。

ただ、欠点としては、現在ではほとんど使われなくなったために使いこなすためには多少の勉強が必要なこと。
また、それゆえ、短歌を知らない一般の人たちが読んだときに意味を正確に理解してもらえない(と言うよりも、最初から毛嫌いして読むことすらしてもらえない^^;)などが挙げられるように思います。




【口語】
文章を書くときの書き言葉「文語」に対して、日常はなすときに用いる言葉を「口語(こうご)」と言います。
本来、短歌とは文語によって表現されてきたものなのですが、ここ数年、話し言葉である「口語」を取り入れた短歌が登場してきました。

「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの  (俵 万智)

口語短歌といえばやはり俵万智さんが有名でしょう。
1987年に発売された俵さんの第一歌集「サラダ記念日」は、短歌を知らない若者達に広く支持され読まれました。
通常、数千部程度売れればいいほうの歌集の世界において、200万部という驚異的な売り上げを記録し社会現象にもなったほどです。

口語短歌の問題点を挙げるならば、表現が俗になりすぎる、文語に比べて使える表現の形式が少ないなどが挙げられるでしょうか。
たとえば文語で過去を表す助動詞「き」「けり」「つ」「ぬ」「たり」「り」などは、口語ではすべて「た」の一言で表現されてしまいます。

これはこれで一見便利なようですが、逆に言えば文語で出来た表現の微妙な違いが口語では表現できないと言うことです。

また、短歌の性質上完全な口語には収まりきらないことが多く、文語と口語の混同という少々混乱した事態を招くことも多かったりします。


このように口語短歌は文法的に多くの問題点を抱えていますが、その反面、話し言葉であるために短歌を知らない人たちにも理解しやすく、受け入れられやすいという利点を持っています。
最近のNHKラジオ放送の「ケータイ短歌」などの短歌ブームも、この口語短歌の利点が認められているというよい証拠でしょう。


僕自身のことを言うなら、最初、口語短歌から初め、その後、文語旧仮名などを少々学んだ後、現在はふたたび口語(時々、口語と文語の混同もする)新仮名短歌に戻っています。
(旧仮名と新仮名については次回に述べるつもりです。)

文語と口語はどちらが優れていると決め付けられるようなものではないと思います。
出来ればどちらの形式をも勉強し、その利点と問題点をよく知り、そのうえで自分自身に最もあった表現方法を見つけるのがよいのではないでしょうか。


短歌の基本7 「旧仮名と新仮名」について
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