短歌入門部屋
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どなたでも短歌を自由にはじめられる初心者用の短歌入門部屋です。
(筆:黒路よしひろ)
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【短歌の基本3】
【表記について】
つぎに短歌の「表記」についても、少し書いておこうと思います。
まず、この歌を見てください。
死者たちの魂はこぶ黒蝶が満ちあふれおり大和の野辺に (黒路・作)
「黒蝶」は「こくちょう」と読みます。
うん、一見なんでもない普通の短歌ですね。
でもこの表記を…
死者達の魂運ぶ黒蝶が満ち溢れおり大和の野辺に
死者たちのたましいはこぶ黒蝶がみちあふれおり大和ののべに
このようにするとどうでしょうか?
一首目の場合、漢字表記が多すぎてちょっと窮屈な印象がしますよね。
また、歌全体の見た目も短くなりすぎてちょっと不恰好な気がします。
(別の機会に述べるつもりですが、「短歌の天地(上下)は長いほうがよい」ともよく言われます。)
逆に二首目は、平仮名表記が多くてその部分で間延びしたような不自然さを感じるかと思いますし、「みちあふれおり」が「道あふれおり」なのか「満ちあふれおり」なのかも分かりにくいですよね。
このように、おなじ短歌でも表記の仕方ひとつでまったく違った印象になることが分かってもらえるかと思います。
歌を詠む場合、声に出して(文字通り)詠んでいた万葉集の時代などとは違って、現在では文字によって書き、それを読み手に読ませるため先に述べた「調べ(リズム)」とおなじくらいにこのような表記の仕方も作品の完成度に重要な影響を与えるのです。
これも「こうしなければいけない」というような決まりはまったくなく人それぞれなのですが、著名な歌人の方達の作品などを参考にして、どのような表記のされ方をしているのかを皆さんご自身でまた学んでみてください。
短歌そのものの表記について
表現上の表記とは別に、短歌を書くときのルールとしての表記についても追加で解説しておきたいと思います。
石川啄木の三行書きなどの一部の例外はありますが、短歌は下記のように基本的に縦書きで一行で表記します。
(もともとは新聞などで記載するときに紙面の余白を少なくするためというのが理由だそうです。)
ですので、新聞歌壇などに応募される場合なども特別な指定がない場合は縦書き一行で書きましょう。
死
者
た
ち
の
魂
は
こ
ぶ
黒
蝶
が
満
ち
あ
ふ
れ
お
り
大
和
の
野
辺
に
ただし、ネット上でのみは縦書きがし難いという理由で例外的に横書き一行で表記されます。
死者たちの魂はこぶ黒蝶が満ちあふれおり大和の野辺に
こんなふうな感じで。
また、一句ごとにスペースなどでの区切りを入れることも基本的には行いません。
死者たちの 魂はこぶ 黒蝶が 満ちあふれおり 大和の野辺に
死者たちの
魂はこぶ
黒蝶が
満ちあふれおり
大和の野辺に
このように一句ごとに区切ったり数行に分けて表記するとそれだけで素人と判断されて損をする場合が多いので、出来れば最初のうちは一行書きの基本に沿って表記されたほうが無難かと思います。
ちなみに、スペースや句読点は漢字続きなどでつなげて書くと意味が把握しにくくなる場合や、読み手に一拍おいて読んでほしい場合などに意図的に入れられたりします。
スペースや句読点の効果的な使用例
歌、卵、ル、虹、凩、好きな字を拾い書きして世界が欠ける (荻原裕幸)
ハロー 夜。 ハロー 静かな霜柱。 ハロー カップヌードルの海老たち。 (穂村 弘)
人体に溶けている塩 燃やされて塩はいずこに還るか知らず (吉川宏志)
連休に来る遊園地 子を持てば典型を生きることの増えゆく (俵 万智)
会ひたいといふ、あひたさは冷えながらくだるなみだを追ひぬいてゆく (大辻隆弘)
スペースや句読点については個人の好みもあって、こうしなければいけないという決まりはありませんのでこのあたりも著名な歌人の方の作品などをたくさん読んで、みなさんご自身で効果的な使用法を判断していってもらえればと思います。
短歌の基本4 「詠むと読む」について
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