短歌入門部屋
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短歌偏熱狂時代
    ひと
その女性が示してくれた方角にとても凄いものを僕は見たんだ

君はアニメの見すぎなのだよ目を覚まし、少しは大人になったらどうだ

真夜中に目覚めて見上げた天井にとても凄いものを僕は見たんだ

それは科学を否定するから自らの力で闇に葬るのだよ

死んだ祖父が隠していた箱の中にとても凄いものを僕は見たんだ

それは俺の人生の全てなのだから誰にも語ってくれるな、よしひろ。

望遠鏡で覗いた土星の輪の中にとても凄いものを僕は見たんだ

それはかつて母国のために戦った宇宙の戦士の亡骸だろう

愛ちゃんの大きく開けた口の中にとても凄いものを僕は見たんだ

それは二人だけの秘密なんだから誰かに言ってはいやだよ、クロ君。
あまどい  
雨樋に詰まった落ち葉のその中にとても凄いものを僕は見たんだ
           さなぎ
それはイノシシの蛹なのかもしれないとインチキ学者は鑑定したよ

姉さんのきれいな足のひざ小僧にとても凄いものを僕は見たんだ

それは私のもう一つの顔なんだからちゃんと挨拶しなくちゃだめよ

迷い込んだ都会の闇のその中でとても凄いものを僕は見たんだ

それは僕の弱い心が生み出した愚かな憧れそのものでしょう

忘れ物を取りに戻った教室でとても凄いものを僕は見たんだ

それは神聖な教育の場での出来事とはとても思えぬ光景でした

宝石を狙って忍び込んだ博物館でとても凄いものを僕は見たんだ

それは芸術の域まで達した同業者の神業のような技術でした

テキサスの埃まみれの小さな町でとても凄いものを僕は見たんだ

それは覚悟を決めた男のまなざしと十年経ってようやく気付いた

雪が解けて濁った池の水の中にとても凄いものを僕は見たんだ

それは祖先のミイラなのかもしれないと僕はうすうす気付いていたよ

ふりかえったあなたの瞳のその中にとても凄いものを僕は見たんだ

それはこの世の全ての不浄を包み込む仏のような心でした
             くれない
西の空に沈む夕日の紅にとても凄いものを僕は見たんだ

それは僕が君を愛した証だと僕はそのとき、そう思ったんだ。

ドクロの旗を掲げて進む船の上からとても凄いものを僕は見たんだ

「それはかつて君が夢見た場所だよ」と陽気なオウムが教えてくれた

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