短歌入門部屋
短歌入門部屋
http://tanka.ikaduchi.com/
どなたでも短歌を自由にはじめられる初心者用の短歌入門部屋です。
(筆:黒路よしひろ)

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【短歌の作り方(実作編)】
短歌の作り方(実作編)

短歌を多くの方に詠んでもらおうと掲載した短歌入門部屋(短歌の作り方)が、なかなかに好評を頂いているようでたいへんうれしく思います^^
ただ、短歌の基本は理解したけれど、実際に自分で作ってみようと思ってもなにを詠んだらいいのか分からないという方が多いようなので、ここでは新たに短歌を実際に作る上での作り方のアドバイスなどを簡単にですが書いてみたいと思います。


難しい言葉で短歌を作ろうとしない

短歌というと、どうしても百人一首などの優雅なイメージが付きまとって、「なり」や「けり」などの助動詞などを使ったり無理に季節感のある情景などを詠ってカッコよく作ろうとしてしまいがちですが、初心者がそういう詠い方をしてしまうと表面上の言葉だけ立派で中身が空っぽの歌になってしまうことがよくあります。
たとえば難しい文語調の言葉などを一切使わなくても…

目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき   穂村 弘

枇杷の木を上から下へたどるのが段々畑をぬけるちかみち   やすたけまり

おながいねって渡されているこの鍵をわたしは失くしてしまう気がする   東 直子

これらの歌のように、話し言葉そのままのような内容でも、感性さえあればいくらでも素敵な歌に仕上がるのです。
短歌はもともとは文語調で詠むのが基本でその中に口語調を取り入れたりすることはありましたが、近年では反対に口語調から短歌をはじめて、徐々に文語を学んでいくという流れに変わってきているような気がします。
ですので、みなさんも最初は無理に文語の堅苦しい歌にこだわらず、口語調で気軽にはじめてみられるのもよいかも知れません。


事実にこだわりすぎない

短歌は事実だけを詠まなければいけないものでは決してないので、ときにはまったくの空想や妄想の世界に自分自身を置いて詠んでみるのもいいかも知れません。
たとえば実際に旅行に行った場所で、そこに大好きなあの人も一緒に居てくれたらいいのにと思うことがあるでしょう。
そんなとき…

松が根の岩田の岸の夕涼み君があれなとおもほゆるかな   西行法師
(松が根の岩田の岸での夕涼み、いまここに君がいてくれたらなあ)

西行法師のこの歌のように、実際にいまいる場所でこんなふうに素直にそのままの気持ちを詠んでみるのもいいでしょう。
逆に…

名も知らぬ少女を肩に眠らせて列車から見るコスモス畑   黒路よしひろ

僕のこの歌のように、妄想を実際にあったこととして詠ってしまうのも面白いように思います。
たとえば自身が漫画の主人公にでもなったつもりで、劇的な恋愛を空想して詠ってみるのもいいかも知れませんね。

このように、事実でなくてもよいと思えば心が軽くなって、短歌にいままで以上に気軽に取り組めるようになるのではないでしょうか。

短歌はもちろん事実を詠んで構いませんが、事実にこだわるあまり発想の幅が狭まってつまらない歌になってはなんの意味もないように思います。
そもそも短歌には事実だけを詠まなければいけないというルールはないので、みなさんも事実と空想や妄想の世界を自由に行き来して、個性ある素敵な歌を詠んでもらいたいと思います。


小さな視点で見たままを詠む

短歌に悩んだときは自然詠を詠むとよいと言われることがあります。
自然詠(自由詠ではない)とは、作者自身や作者の考え思想などが前面に出てこない、自然や他人の姿、動作などの見たままを詠った短歌です。

フラミンゴ一本の脚で佇ちてをり一本の脚は腹に埋めて   奥村晃作

次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く   奥村晃作

ゆっくりと菊人形の義経の顔を伝わる一筋の雨   小高 賢

もちろん見たままを詠うといってもほんとうに見たままを歌にしただけでは作品としては成り立ちませんが、例に挙げた歌のように目の前の対象に意識を集中して見ることでその対象の持つ本質を捉えることが出来れば、これらの歌のように優れた作品が生まれてきます。

このような自然詠は自身の思想を出発点として生まれないぶん、スランプなどにも強く、短歌を継続して詠んでいく上で非常に効果的な詠法のひとつのようです。
もちろん大自然などの大きな対象でも構いませんが、短歌の場合は目の前にあるひとつの小さな対象に絞って詠むほうが歌に個性も表れて詠みやすいようですね。


語りかけの言葉

神風の伊勢の国にもあらましをなにしか来(き)けむ君もあらなくに   大来皇女
(あのまま伊勢の国にいればよかったものを何をしに私は大和へ帰ってきたのだろう、愛する君ももういないのに)

万葉の昔から、短歌は死者や大自然の神々、道々の精霊たちへの語りかけ(祈り)の言葉として詠まれてきました。
また、歌垣(うたがき)という、村の若者たちが集まる場で男性から女性への恋の言葉の代わりに歌を詠みかけたりもしてきました。

まりあまりあ明日(あす)あめがふるどんなあめでも 窓に額をあてていようよ   加藤治郎

君とした雪合戦のあの雪の白さを越えるものはまだない   天野 慶

そんなに自分を追い込むなよとよそ様の作中主体に申し上げたい   斉藤斎藤

はなやかなぶあつい肉の満月よこちらへおいで泣かせてあげる   江戸 雪

現代短歌でもこのような形で、愛する人や友、ときには他人の作品の作中主体や星にまでも語りかける口調の短歌が詠まれています。
他にも…

君たちが言わなければ死語になる戦隊ヒーロー正義を叫べ!   天野 慶

この歌のように、応援歌としての語りかけの歌もあります。
みなさんも、短歌に詠むような特別な出来事は思い浮かばなくても、片想いのあの人に伝えたい言葉ならたくさんあるのではいでしょうか?
普段は言えないけれど、家族や友達に伝えたい感謝の気持ちなどもあるのではないでしょうか?
歌が詠めずに悩んだときは、そんなふうに恋人や家族、友人(もしくはまったく関係のない他人でもかまわない)へ普段は伝えられない想いを「語りかけの言葉」として歌に詠んでみるのもいいかも知れません。


題詠として詠んでみる

学校の宿題など、題詠が詠めずに悩んでいる方にはなんの参考にもならないかも知れませんが、短歌に詠む内容が見つからずに悩んでおられる方は、ご自身でひとつお題を決めて題詠として詠んでみるのもいいかも知れません。

虫のこえ翻訳すれば爽やかに「僕の子供を産んでみないか?」   黒路よしひろ

僕のこの歌は歌会で「虫」のお題で詠んだものですが、お題を決めて詠むことで普段は全く使わないような言葉や発想が生まれてくるので、自分でも驚かされたりします。


東海(とうかい)の小島(こじま)の磯(いそ)の白砂(しらすな)に
われ泣(な)きぬれて
蟹(かに)とたはむる   石川啄木

頬(ほ)につたふ
なみだのごはず
一握(いちあく)の砂を示(しめ)しし人を忘れず   石川啄木

いたく錆(さ)びしピストル出(い)でぬ
砂山(すなやま)の
砂を指もて掘(ほ)りてありしに   石川啄木

上に挙げた歌は歌集「一握の砂」に収録されている石川啄木の有名な短歌ですが、じつはこれらの歌も「結び字」という題詠で詠まれていることをご存じでしょうか?
「結び字」は題詠の一種で、題詠ほどにはお題に縛られずにお題から発想を広げて自由に詠むもので、よく見るとこれらの歌は「砂」というお題で詠まれているのが分かります。

このように、お題を自分で決めて詠むことで、なにもない状態よりは歌のイメージが湧いてくるのではないでしょうか。

ちょっと無茶な話に思われるかも知れませんが、もし題詠で悩んでおられる方はそのお題以外にもうひとつお題を自分で決めて二つのお題を詠み込んでみるのもいいかも知れませんね。
まったく関係のない二つのお題を詠み込もうとすることで、自分では思いもよらなかった個性的な発想が生まれてくるかも知れませんよ。


恥ずかしがらない

最後に、歌を詠むときは恥ずかしがらすに「目立てれば恥をかいてもいい」というぐらいの気持ちで詠むことが大事だということを伝えておきたいと思います。
短歌をはじめたばかりの方はおそらくそれまでの人生で自分の作ったなにかを人前に発表した経験はあまりないかと思います。

そんな人に恥ずかしがるなと言っても無理かも知れませんが、そもそも読み手(読者)は作者が恥ずかしがりもしないような無難な作品など読んでもなにもうれしくはないものです。
ですので、みなさんもぜひ自分から進んで恥をかくぐらいの気持ちで思いきった表現の個性ある歌を詠んでもらいたいと思います。

ではでは、あまり参考にならなかったかも知れませんが、みなさんぜひ素敵な歌を詠んでみてくださいね。

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