短歌入門部屋
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短歌書籍紹介

『京都冷泉家の八百年〜和歌の心を伝える』  冷泉為人 編 (NHK出版)
定価2100(税込み)
おすすめ度★★★
難解度★★★★

本書は「和歌の家」として鎌倉時代から今日まで、約800年間続く京都冷泉家の歴史と、冷泉家に代々受け継がれてきた和歌の伝統的技法を紹介しています。

明治期の短歌革新運動によって和歌(短歌)はそれまで受けていたさまざまの制約から解放されました。
ただ、それは逆の見方からすれば、何百年もの間和歌が受け継いできた多くの伝統を切り捨ててしまったとも言えるのではないでしょうか。

本書では冷泉家の祖先であり新古今和歌集の選者の一人でもあった藤原定家など、歴代藤原家の歌人たちについても触れることで、「本歌取り」の技法や現代では死語と化してしまった多くの歌語についても学べるようになっています。
また現代では語られることのほとんどない江戸時代の和歌(武士の和歌)の歴史についても記されていることは非常に興味深いと思います。

現代短歌が他人との違い「個性」を重視するのに対して、冷泉家が受け継いできた伝統和歌は「他人と同じであること」を重視するのだそうです。

まあ、この本を読んだからといって伝統的和歌が詠めるようになるわけでもなく、また、現代短歌を詠む上で直接の参考になるわけでもありませんが…

ただ、それでも現代短歌の影で、短歌が失ってしまった伝統的技法、平安和歌の「雅」の心をひっそりと受け継いできたもうひとつの短歌史から、なにか得るものは確実にあると思います。

1300年以上続く短歌のもうひとつの姿、伝統的和歌の世界を伝える書籍としてここに本書を紹介しておきます。


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